大切な時計

ウチの時計は古いねじ巻き式の柱時計。

夫が生れる前からあったものです。
亡くなったおばあちゃんが踏み台に乗ってきりきりと巻いている姿を思いだすといいます。夫はおばあちゃんに育てられたので、その背中を見ているのでしょう。

実家の物置きに転がっていたのを見つけ、オーバーホールして使っています。
持ち込んだ時計屋さんは「すごくいい時計ですね、音を鳴らす線が2本あって珍しいです。今ではほとんど見ません大切にしてください。」と丁寧に渡してくれました。
実はうち1本は折れていたそう。手づくりの部品で直してくれたのでした。
驚くことに誰も折れていたことを知らず、完璧な音を聞いたことがなかったのです。

どうやらひとつめの音が鳴り出しを、ふたつめの音が鳴り締めを担当しているようで、ようやく完璧な仕事ができるようになったわけです。
それはめりはりのある澄んだ素敵な音でした。

今は慣れてしまったのでしみじみと耳をかたむけることはありませんが、
おかしなものでこれはこれで都合良く、便利に使っています。
「あれっ、もう3時か。」なんて耳で判断しているのです。
必要ないときはなぜか聞こえません。雑音にはならないのです。

夫は週1回、4と8のところにある穴にねじを差し込み、同じ回数を巻きます。
忘れっぽく、面倒くさがり屋なのになぜかこれだけは忘れないし、
私に頼むこともありません。
出張前はあらかじめ巻いていくほどです。だからめったなことでは止まりません。

『あなたが死んだらきっと泣く。
けど、この時計が数日して止まっているのを見たら、もっともっと泣くと思うよ。』

夫はにやりと笑うのでした。
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by r_dew_1 | 2005-05-02 03:22 | A4  

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