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『お肉のお味』

すこし前、日本の経済が勢いよく上ろうとしているとき、金融の自由化がおこなわれたそうです。それによって更に勢いが増し、バブルという時代に突入しました。金融のルールが変わった。これはそんな時代に草食動物がお肉を食べたお話です。

しまうまはたくさんの草を食み、咀嚼し、決して合理的ではない方法で血と肉を作ってきました。ある日、一片のお肉が放り込まれました。遠巻きにそれをながめます。勇気のある者がひずめの先でそれをつっきます。やわらかそう。鼻を近づけます。生臭いけど食べられないこともなさそう。折しも草の効率の悪さは気になっていたところです。「食べてみる価値あるんじゃないか?」そのひとことがきっかけになりました。生来の真面目さでいっせいに口へ運びます。多少の消化不良は忍耐づよさをもって克服しました。なによりも高タンパク、高カロリーその栄養効果は絶大でした。筋肉は増強し、血液には粘度が増し、脳細胞は合理性を求め、競争という心理に目覚めます。そのうえ肉食のコミュニティにも仲間入りです。気がついたときには世界を圧巻する強力さを手に入れました。しまうまが牙を持ち、群れとなって巧妙に獲物を狙うのですからたまりません。しかも、勤勉に。奔放な食べっぷり、食べきれない分は干し肉にしてほかの肉食動物に売ることも忘れません。御機嫌伺いの品にもなるのです。
あれから20年。
この新種のしまうまは立派な肉食動物になれたのでしょうか。
噂によると、いまや筋肉は脂肪と化し、血液はドロドロ、脳細胞はシナプスを失い、こんがらがった遺伝子は種の保存を拒み、心は心筋梗塞の不安におびえている。草食動物に戻ろうという気持ちあるらしい、けど草を食むための臼歯はすでにありません。かといって肉食動物としては未成熟。結局、新種の動物として前例なきいばらの道を模索していく運命です。
あのとき痩せていたらいおん、お肉を放り込んだらいおんはすっかり体力を取り戻し、今日もたてがみをなびかせてどこかの油を狙っています。
by r_dew_1 | 2005-06-06 22:05 | A4