いつもの朝。

《お題》
『「やった! ついに完成した。この発明は人類の歴史を変える!」・・・え? どんなふうに?』



「早くしなさーい!」

熱くなったフライパンに卵を割り落とす。
朝の忙しい時間なのにチリチリと焼けていく白身のふちを見つめながら、これまでの人生で私は一体、いくつの卵をこうして割り、焼いたのだろう。などと、ふと考える。
私の叫ぶ声は卵と油の口げんかの声にかき消され、半永久的にマイナスイオンを発し続けるという張り替えたばかりの『森の壁』という名の壁紙に吸い込まれていく。壁紙の機能なんて別に半永久的でなくてもいいのに...。と思う。あと10年もしたら汚れてしまって、再び新しいものに張り替えることになるのだから。

s博士がその量産化方法を発明、それによって完成をみたロボットは今やほとんどの家庭に普及している。あと10年も経てば私たち人類はそれを使いこなし、歴史すら変えてしまうかも知れない。

          
          ***


息子の朋生が転げ落ちるように階段を降りてくる。

「おはよう。ねぇ、かあさん。今日だけアレ、貸してよ。」
「ダメダメ。今日は早番だし、そのつもりで動いてるんだから。」
「今日だけ、ねっ?」
「だ〜め!」

「あー、遅れちゃう!」
娘の菜央には「おはよう。」と「遅れちゃう。」の違いを上手く教えられなかったことを、親としてとても反省している。
それでもトーストの上に器用に目玉焼きをすべり乗せて、コーヒーで流し込んでいく様子をみていると、親の力だけではどうにもならない時代なのかもしれないなどと、妙にあきらめてしまうのだ。

「ねぇ、今日だけ貸して。」
朋生が今度は菜央にねだっている。

「いやよ。朋にはアレで充分。私だって小学生のときはそうだったんだから。」
「なんだよ、ケチ!」
「ケチで結構。あー、遅れちゃう。」

「かあさん、とうさんもう、出かけた?」と、朋生が私に訊く。
「まだだけど、とうさんに頼もうと思ってるんなら、無駄だと思うけど。」
「そうそう、無駄無駄。」と、菜央がからかい半分にチャチャを入れる。
「オマエはうるさい、黙ってろ!」
最近まで泣かされ続けだった朋生は怒ると姉をオマエというようになっている。

夫の出社は日ごとに時差が変わるので不規則になる。今朝はそろそろ出かける時間だ。
「おはよう、朝から賑やかだな。」

「あっ、とうさんおはよう。途中、学校へ送って行ってよ。」と、さっそく朋生。
「今日はだめだな。会議場が36年後なんだよ。操作が複雑になるからね。」と、夫にもあっさり断られる。

「いってきま〜す。」
菜央がほらね!という顔で朋生を一瞥して朝食の席を立ち、庭先へ向かった。
ここ数年、菜央はここから家を出る。
ガチーンといつもより強めの音を立てて打たれたボールは、菜央を乗せていきおいよく飛んでいった。

コーヒーを飲み終えた夫が
「それじゃ、行ってくるから、」といって2階の部屋に上がっていくのを見送り、時計見るとそろそろ私も出かけなくてはいけない。

「朋!ぐずぐずしないで早くしなさい。」
「ふぁ〜い。」ふて腐れた返事が返ってくる。
やる気のなさそうな朋生の頭にペタリと吸盤を押し付けてつけて背中を玄関へ送り出す。

他の小学生たちの登校はとっくに始まっていて、この時間の見なれた風景を見上げる。
新一年生たちはまっすぐと一列になり、3、4年生になると、友だちどうしで相談したのか渡り鳥のように簡単な図柄を描いたりしながら飛んで行く。朋生たち6年生といえば...、なんだかどの子も半分眠っているようなかんじでフラフラと飛んで行くのがおかしい。それでもいつの時代も子どもたちには朝の光がよく似合う。

小学生は特別な理由がない限り、徒歩かタケコプター登校と決められている。
朋生にとって今日は『特別な理由』を行使したい何かがあったのかもしれないが、大人になるとはずかしくてタケコプターなどつけられない。いまのうちだけの醍醐味なんだということ、あと数年すればなつかしい体感の記憶になってしまう。

菜央も来年は高校生になるし、年頃になればいつまでも乗り物ボールというわけにはいかなくなる。
さすがに純正品には手が出ない。複製品はポケットの道具が8時間に1回しか使えない。ひとり1台持てれば複製品でも充分なのだけど、家族で共有するとなると足りないものも多くなる。
夫も30年未来から50年未来の仕事も任されるようになったらしくて、タイムマシーンは必需品だ。ますます物入りになるけれど、その分手当ても上がるだろうし、私も副店長に昇格できそうだ。もう1台くらい買えるかなぁ。と思う。

 
          ***


そんなことを今朝も考えながら家族を送りだし、身支度を済ませた私は大きな声で叫んだ。

「ドラえもーん!出かけるから、どこでもドア出してぇ〜!!」



講評/審査結果
TBでボケましょう2006第4回に参加しました。
■□■□■□■【トラバでボケましょうテンプレ】■□■□■□■□■
【ルール】
 お題の記事に対してトラックバックしてボケて下さい。
 審査は1つのお題に対し33トラバつく、もしくはお題投稿から48時間後に
 お題を出した人が独断で判断しチャンピオン(大賞)を決めます。
 チャンピオンになった人は発表の記事にトラバして次のお題を投稿します。
 1つのお題に対しては1人1トラバ(1ネタ)、
 同一人物が複数のブログで1つのお題に同時参加するのは不可とします。

 企画終了条件は
 全10回終了後、もしくは企画者が終了宣言をした時です。

 参加条件は特にないのでじゃんじゃんトラバをしてボケまくって下さい。

 ※誰でも参加出来るようにこのテンプレを記事の最後にコピペして下さい。

 企画元 毎日が送りバント http://earll73.exblog.jp/
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by r_dew_1 | 2006-04-23 19:38 | A4  

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