原油取引に投資しませんか。まったくどこでどう電話番号を調べてくるのか全世界が注目する原油相場の話がごくごく小市民のウチに迷い込んで来るなんてそれだけでもうプンプンのウソ臭さだ。
「もしもし?聞いてますか?」
「....、はい、聞いてます。」
「ですから、何で人は毒を持つフグを食べたのか。ってことです。何故だと思いますか?」
「食べるものがなかったから。」
「違いますよ。他の魚や貝だってあるでしょう。なのに何故、わざわざ毒の危険があるフグなのか。ってことです。」
「それしか捕れなかったから。」
「...。だから、そうじゃなくてぇ...。」
唐突に「フグをはじめて食べた人は死んだと思うんです。なのに何故今日まで食べられ続けて来られたのだと思いますか。」と話をはじめた。投資のうま味やリスクの説明を「フグ」に喩えようとしてているらしいのだが、あまりにもへなちょこ展開なのでそのまま受話器を肩で挟みながら話を聞いている。私から「おいしいから。」という言葉を引き出したいのはわかっている。けどそう答えないためにかけあい漫才みたいになって話が先に進まないのだ。
「内臓は食べなかったから。」
「...それはですね、おいしかったからなんです。」
「はぁ。(あ、なんだ自分で言っちゃったんだ。)」
「ですから投資というのもフグのようなもので、
きちんとしたノウハウをもって毒を取り除けばおいしいところだけを手に入れることができるのです。」
「はぁ。」
「で、今、原油価格が高騰しているのを知っていますか?」
「まぁ。」
「原油が高くなるってことは、モノの値段が上がるってことなんですよ。
再びオイルショックみたいなことが起こるかもしれないんですよ。
オイルショックのときのように、トイレットペーパーが買えなくなったりしたらどうします?」
「オイルショック、知ってるんですか?」
「知りませんけど、テ、テレビで見ました。」
「ふ〜ん。」
「白黒テレビ。」
「もう、カラーだったんじゃない。」
「・・・そうだったかもしれません。
それにしてもトイレットペーパーがなくなったらどうします?」
「あれはなくなったんじゃなくて、噂であんな取りつけ騒ぎになっちゃったんでしょ。」
「風説の流布ですね。」
「えっ、違うと思うよ。」
「そ、そのようなもの、ってことです。今はウォシュレットがありますしね。」
「それだともっと原油使うことになるんじゃない?」
「それでは主婦の方にはちょっと気になるお話をしますね。
納豆。食べますよね、納豆。.....」
「容器が石油製品なんでしょ。」
「お、よく知ってますね。値段は変えずに中身が少なくなっているんですよ。
遂にはひきわりになってしまうかもしれません。」
「ひきわりのほうが工程は多いから高くつくんじゃない。」
「そうかもしれません。じゃあ、かまぼこ...」
「ちくわ。」
「あっ、そうちくわでした。」
「穴でしょ。」
「大きくなってるんですよね、穴が。あと、片栗粉の量も多くなってるんです。」
「ふーん。ちくわって、片栗粉はいってるんだ。知らなかった。」
「片栗粉じゃないかもしれないけど.....、なんかネバネバしたつなぎみたいなものです。」
「大丈夫?なんか話が破綻してきてるんじゃないの。」
「そんなことありませんよ。とにかく私たちの生活には原油はなくてはならないものなんです。
もしなくなったら江戸時代の生活並になってしまうそうです。」
「それも楽しいかも。」
「楽しくないでしょう。プラスチック製品はみんななくなって、携帯なんて木になっちゃうんですよ。木。」
「そのまえに携帯がなくなるんじゃない。」
「ところで原油は何で出来ているか知っていますか?」
「化石。」
「おっ、よく知ってますね。何億年も前のプランクトンなどの化石なんです。その原油が今や足りなくなってきているんです。
だからといって次の原油が出来るまでに何億年も待てますか?」
「もういいよ。いまある油田の原油がなくなる頃には私、死んでると思うから。」
まだあと2倍くらい話は続いた。
原油に投資はしないけど、君がいいやつなのはわかったよ。おもしろかった。
「もしもし?聞いてますか?」
「....、はい、聞いてます。」
「ですから、何で人は毒を持つフグを食べたのか。ってことです。何故だと思いますか?」
「食べるものがなかったから。」
「違いますよ。他の魚や貝だってあるでしょう。なのに何故、わざわざ毒の危険があるフグなのか。ってことです。」
「それしか捕れなかったから。」
「...。だから、そうじゃなくてぇ...。」
唐突に「フグをはじめて食べた人は死んだと思うんです。なのに何故今日まで食べられ続けて来られたのだと思いますか。」と話をはじめた。投資のうま味やリスクの説明を「フグ」に喩えようとしてているらしいのだが、あまりにもへなちょこ展開なのでそのまま受話器を肩で挟みながら話を聞いている。私から「おいしいから。」という言葉を引き出したいのはわかっている。けどそう答えないためにかけあい漫才みたいになって話が先に進まないのだ。
「内臓は食べなかったから。」
「...それはですね、おいしかったからなんです。」
「はぁ。(あ、なんだ自分で言っちゃったんだ。)」
「ですから投資というのもフグのようなもので、
きちんとしたノウハウをもって毒を取り除けばおいしいところだけを手に入れることができるのです。」
「はぁ。」
「で、今、原油価格が高騰しているのを知っていますか?」
「まぁ。」
「原油が高くなるってことは、モノの値段が上がるってことなんですよ。
再びオイルショックみたいなことが起こるかもしれないんですよ。
オイルショックのときのように、トイレットペーパーが買えなくなったりしたらどうします?」
「オイルショック、知ってるんですか?」
「知りませんけど、テ、テレビで見ました。」
「ふ〜ん。」
「白黒テレビ。」
「もう、カラーだったんじゃない。」
「・・・そうだったかもしれません。
それにしてもトイレットペーパーがなくなったらどうします?」
「あれはなくなったんじゃなくて、噂であんな取りつけ騒ぎになっちゃったんでしょ。」
「風説の流布ですね。」
「えっ、違うと思うよ。」
「そ、そのようなもの、ってことです。今はウォシュレットがありますしね。」
「それだともっと原油使うことになるんじゃない?」
「それでは主婦の方にはちょっと気になるお話をしますね。
納豆。食べますよね、納豆。.....」
「容器が石油製品なんでしょ。」
「お、よく知ってますね。値段は変えずに中身が少なくなっているんですよ。
遂にはひきわりになってしまうかもしれません。」
「ひきわりのほうが工程は多いから高くつくんじゃない。」
「そうかもしれません。じゃあ、かまぼこ...」
「ちくわ。」
「あっ、そうちくわでした。」
「穴でしょ。」
「大きくなってるんですよね、穴が。あと、片栗粉の量も多くなってるんです。」
「ふーん。ちくわって、片栗粉はいってるんだ。知らなかった。」
「片栗粉じゃないかもしれないけど.....、なんかネバネバしたつなぎみたいなものです。」
「大丈夫?なんか話が破綻してきてるんじゃないの。」
「そんなことありませんよ。とにかく私たちの生活には原油はなくてはならないものなんです。
もしなくなったら江戸時代の生活並になってしまうそうです。」
「それも楽しいかも。」
「楽しくないでしょう。プラスチック製品はみんななくなって、携帯なんて木になっちゃうんですよ。木。」
「そのまえに携帯がなくなるんじゃない。」
「ところで原油は何で出来ているか知っていますか?」
「化石。」
「おっ、よく知ってますね。何億年も前のプランクトンなどの化石なんです。その原油が今や足りなくなってきているんです。
だからといって次の原油が出来るまでに何億年も待てますか?」
「もういいよ。いまある油田の原油がなくなる頃には私、死んでると思うから。」
まだあと2倍くらい話は続いた。
原油に投資はしないけど、君がいいやつなのはわかったよ。おもしろかった。